「男はつらいよ 寅次郎相合傘」 | オジ記

「男はつらいよ 寅次郎相合傘」

拝啓 車寅次郎様


昨夜


BSテレビ 10:00より


「男はつらいよ 寅次郎相合傘」 拝見いたしました。


秀逸でございました。


浅丘ルリ子演じる、旅の歌姫リリーが


あなた様にとって


単なる”行きずりの女”から


”生涯の女”へと変わってゆく姿が


甘く切なく描かれておりました。


特に


あなた様ご不在の折に


妹さくらが、感極まって


「お兄ちゃんと結婚してくれたら、どんなにか・・・」


と、リリーに迫ったとき


「こんな女でよければ・・」


リリーはあなた様との結婚を真剣に考えていたのに


あなた様が帰ってきて、さくらからそのことを告げられたときの


あなた様のなんとも複雑な表情の後


リリーに向かって「それ、おまえ、冗談だろ、な、冗談だよな・・・」・・・と、


それを受けたリリーが、一瞬の沈黙のあと、


「冗談よ、冗談に決まってるじゃない・・」と、言って


すばやく、立ち去ってしまった、あのクライマックス。


いつも”幸せ薄い”旅の歌姫リリーと


いつも”幸せに背を向ける”漂白のタビニンあなた様の


二人の人生がもっとも接近したシーンでございました。


その時から、リリーはあなた様にとって


単なる”行きずりの女”から”生涯の女”へ、


そして別離の後、その後の作品において、


再会・・・別離・・・再会・・・別離 と繰り返すうちに、


ついにリリーは”永遠の女”へと


昇華してゆくのでした。



拝啓 車寅次郎様


あなたを演じた渥美清は


すでにこの世におりません


しかし、渥美清が演じた車寅次郎は


こうして今もスクリーンに


そして


わたしたちのこの胸にしっかりと残っております



シリーズ最高傑作といわれるこの作品


それは たぶん


あなたの生き方が


同じような境遇に人生を行き過ぎなければならなかった


”リリー”というフィルターを通したとき


鮮明に浮かび上がってきているからなのだと思います


そして この”リリー”とは


車寅次郎をこよなく愛してやまない


”わたしたち”


にほかなりません



くりかえしましょう


渥美清はすでにこの世にいません


でも車寅次郎は


依然として、この故郷(クニ)の何処かの旅の空の下


相も変わらず 啖呵売をして


身過ぎ世過ぎを確かにしているのです



どうか くれぐれも お体ご自愛いただきますよう・・・



                T・政博 輩